「転職しようかな、でも失敗して今より環境悪化したらどうしよう。求人は少ないだろうし、難しいかな」そんな風に悩む放射線技師の方は多いと思います。今回は、転職に大失敗した放射線技師Aさんについてお話しようと思います。
Aさんは新卒で救急もある大規模病院でCT、MRI、RIなどを学び、その後知人の紹介で地方の総合病院へ。残業はあるものの夜勤や待機が減り、働き方が少し楽になりました。
今回はそこからさらなる転職をした時のお話になります。
転職に失敗した放射線技師Aさんの実話
総合病院勤務をしていた放射線技師Aさんは、20代にして職場の整形外科医から「独立開業について来てくれないか」ともちかけられます。そのドクターとは気が合い、尊敬していたので、即座に了承。
臨床検査技師の当時の彼女には
「いいと思うけど、今はCT、MRI、RIもしているのに、整形単科になって、もったいないのでは?」と言われますが、
「放射線技師はつぶしがきくから大丈夫。患者さんのための病院を作る先生を支えたいんだ!」と答えます。
そして銀行の借入にまで同行し、開業まで必死に頑張り、無事開業。結果、院長のオペを待っていた患者さんが列をなして殺到。病院は大繁盛します。
Aさんはたくさんの手当をつけてもらい、同年代の中では高収入となり、技師長として活躍します。
彼女とも結婚し、順風満帆。ただなぜか月収では妻より上なのに、ボーナスでは負けていました。
あれ?本当に順風満帆な感じ。これ、失敗談だよね?
はい、本当に完璧な失敗談ですよ。主に勤務環境と収入の点に秘密があるのです。
そして、開業と同時に黒字になって、大満足した院長は開業から1年もたたないうちに毎週土曜日はアルバイトの医師に頼んで自分はゴルフ三昧。
一方Aさんは技師が1人しかいないので、休みはもちろんとれず、39度の熱があっても出勤し、診療後の毎日のオペで連日深夜越えでの勤務。
子どもが産まれても全く育児には参加できず、夫婦仲も悪化。連日5時間以上の残業をして帰宅は連日深夜1時ごろ。しかし、技師長として役職手当てが出ているため、残業代は1円も出ません。
それでも、院長が高齢になり、オペの頻度が減ったので、子どもたちがある程度大きくなったころには夜9時ごろには帰宅できるようになりました。
うわ~、仕事を休めないとか熱があっても出勤とか、だいぶブラックな感じだね。
そうなんです。そしてこのあと、さらにブラック度が増すのです。
そして、例の感染症の始まった年に「今年はボーナスなし」と告げられます。その上病院は、今までのボーナス3ヶ月分を撤廃し、「ボーナス額は利益によってきめる」と、就業規則を変更します。そして感染症が収まった今も、ボーナスはまともに支給されないまま。
現在50代になったAさんは「院長の後継者がいない問題」を抱え、最近正職員に復帰したばかりの臨床検査技師の妻とそれほど違わない年収で働いています。
え?この状況で50代まで働き続けてしまったの?
そうです。Aさんは何度も妻から転職を勧められても「今やめたら、給料が10万は下がるから」と、転職をしませんでした。開業時に一緒に頑張った事務や看護師などの他職種の同僚たちのほとんどは、上がらないお給料に見切りを付けたり、心や体を壊したりして辞めています。
そりゃこんな働き方なら、心身共に病むのは当たり前だよね~
Aさんが抱える問題点をまとめてみますね。
- 手当でごまかされ、基本給が安く、決まった昇給もなかったので年収が低いまま
- 経営方針が簡単に変えられ年収ダウン
- 技師の人手不足で休みが取れない
- 後継者のいない院長が高齢になり、この病院でいつまで働けるのか不安
- 長年整形単科で勤めてスキルダウンしてしまった
どうして順風満帆に見えたAさんがこんなことになってしまったのでしょうか?
放射線技師の転職は難しい?Aさんが抱える問題点
年収問題 給料体系がブラックだった
まずはAさんのお給料の問題点ですが、基本給が極端に安く、そのかわり沢山の手当でごまかされていました。
例えばこんな感じです。
基本給15万円、それに通勤手当や技師手当、技師長手当、家族手当などで15万。
月収は30万になります。でも、例えば夏のボーナスが基本給の1.3ヶ月分だった場合、ボーナスは15×1.3で19.5万円にしかなりません。
同じ月収30万円でも、基本給が28万で手当が2万円の場合、ボーナスは36.4万円になります。また、月収20万円で手当なしでも20×1.3でボーナスは26万円です。月収が10万低い人より、ボーナスが低くなってしまうのです。
基本給 | 手当 | 月収 | ボーナス(1.3ヶ月分) |
15万 | 15万 | 30万 | 19.5万 |
28万 | 2万 | 30万 | 36.4万 |
20万 | 0万 | 20万 | 26万 |
わ~、本当だ。だからAさんは月収は妻より上だったのに、ボーナスは下だったんだね。
これってどういうことなの?
これはいわゆるブラック企業型のお給料体系なんです。こうすると、ボーナスが安くすみ、一般的に基本給から計算される退職金も安くおさえられるんですよ。
そのうえAさんの病院では、定期的な昇給の規定がなかったのです。だから、今も20代のころとほぼかわらない年収なのです。
福利厚生的にもブラックだった
個人経営の規模が小さな病院ではありがちな「技師の人手不足問題」。技師が一人体制の病院だから休みがなかなか取れないのはけっこうあるあるです。
もちろんこんな働き方なので、内部告発があったのか、Aさんの職場は労働基準監督署から注意を受けたりもしています。多少休憩時間などの改善はあったようですが、Aさんの労働環境はそれほど改善していません。
え?どうして?
労基から注意されたのに?
それはAさん自身がこの環境を不満に思っていないから、というのが一番の理由だと思います。ずっと自分しかいない、頑張らないと、と思い込んできたし、開業時からいるので、病院に愛着があるんでしょうね。
気持ちはわかるけど、Aさん、仕事はボランティアじゃないんだよ…
個人病院特有の後継者問題があった
Aさんの病院は院長の後継者がまだ決まっていません。これは個人病院特有の問題とも言えます。法人化しているし、後輩の医師を雇われ院長に据える可能性もありますが、その医師がお気に入りの放射線技師を連れてきて、Aさんが居づらくなったり、その医師とAさんのそりがあわない可能性もあります。
さらに、現在は技師が2人にしてもらえましたが、やはり休みは簡単に取れない状況です。若い頃ならともかく、今後もこんな状態で働き続けられるのでしょうか。
転職でスキルアップどころかスキルダウンしてしまった
転職時に現在の妻から心配された通り、Aさんは20年以上整形単科に勤めてしまって、ここから総合病院や内科など他科への転職は厳しいかもしれません。
予防医学への関心が高まり、最近は健診センターの求人も多いのですが、今さら胃バリウム検査がすぐにできるのでしょうか。
他にもできなくなっていること、他科へ転職するなら勉強しなおす必要のあるものがかなりありますよね。この年齢で、新しい職場で、技師長だった人が1技師として、やっていけるのでしょうか?
もちろん、整形単科でも何も悪いことはありません。レントゲン技師なら整形でのお仕事はたくさんあるし、他の科に転職するなら勉強すれば良いだけです。ただ、いざ転職、という時に選択肢が狭くなったり、年齢が行くほど勉強のハードルが高くなったりはします。
転職のタイミングを逃してしまった
Aさんの妻は何度も転職をすすめました。転職サイトに登録したら?と。
でもAさんは「登録はしてるよ。どこも今より給料がかなり下がるから、転職はできない」
と答えていました。でも、よくよく確認すると、求人情報を閲覧しているだけでエージェントと条件について話し合ったりはしていない様子。
確かに放射線技師の求人は少なく、転職は難しいかもしれません。でも、まったくないわけでもありません。そして転職エージェントと話していれば、職務経歴を考慮してお給料の交渉をしてもらえただろうに、ただ情報を眺めていただけ。もし、もう少し若いうちにしっかり昇給してくれる病院に転職していれば、一時的に多少の年収低下があっても、今頃は今よりもっと年収は上がっていたでしょう。
転職サイトを利用するなら、多くの転職事例を見てきたプロのエージェントに直接相談しないと意味がありません。
転職エージェントには、公開していない求人がたくさんあるのです。
Aさんの事例から、転職時に失敗しないためのチェックポイント4つが見えてきましたよね。
転職に失敗しないためのチェックポイント4つ
それではAさんの転職実話をもとに、もしも転職するならどんなことをチェックすべきか、確認していきますね。
転職するなら、放射線技師専門の転職サイトをおすすめします。多くの転職事例を見てきたプロのエージェントさんは本当に頼りになりますよ。
長く働ける環境か
個人経営で院長が高齢の場合、後継者はいるのか?また、経営状況はどうなのか?という点は、長く働きたいのなら、必ずチェックしたいポイントです。
子どもが小さいうちだけのパートという場合でも、経営状況は心配の種。転職サイトの担当エージェントに聞いてみたり、施設見学の時に観察したり、できるだけしっかり確認してくださいね。
大きな病院でも、サテライトを出したら経営難になってボーナスが激減した、というのもたまに聞く話です。
個人的に聞きにくいことでも転職サイトのエージェントさんを通せば確認できることもありますよ。
お給料や年収は妥当か
お給料は大切なポイントですよね。チェックすべきは以下の点です。
- 基本給は妥当か
- ボーナスはあるのか
- 基本給の昇給はあるのか
- 退職金はあるのか
月収は高くても、手当でごまかされていないか、昇給はあるのか。実は昇給はあっても基本給での昇給ではない場合もあります。技師としての経験年数に対して上乗せしますよ、ということで、基本給ではなく技師手当で昇給する施設もあります。この場合、月収は上がってもボーナスは上がりません。
また、退職金も知っておきたいところですよね。医療業界では退職金の出ない職場も結構あります。ただ、退職金以外では魅力的、という職場ならidecoなどの個人年金で自己防衛する手もありますよ。
福利厚生は充実しているのか
福利厚生も当然大切なチェックポイントです。技師の場合、人数が足りずなかなか休みが取れない職場はけっこうあります。自分はそれほど休みが取れなくても平気、という方でも「絶対休めない」という環境下で働くプレッシャーやストレスは想像以上です。
技師の人数が少ない施設で働く場合は、急な体調不良の場合はどういう対策を用意してもらえるのか、確認が必要ですね。
スキルアップできるか
Aさんの妻は出産前に超音波検査士の資格を取っていたので、出産しても子どもが1歳になる度にパートとしてすぐに社会復帰できていました。スキルアップまではできなくても、キャリアが途切れないようにしていたのです。そのため、正職員での復帰もしやすい状況でした。
転職時には、これで最後の転職、というつもりでいても先のことはわかりません。つぶしがきかない状態になるのは、できるだけ避けたいところですね。
Aさんの妻は、「夫の助けが得られない状況だったから、出産時に自分が退職した。当時自分が勤めていた病院は昇給があったから、あの時辞めていなければ今頃夫より年収は上だったはず。自分がパートで家事育児をしながらも職歴を維持している間に、なぜ夫は年収も上がらず、スキルダウンしてしまったのか…」となげいています。
Aさんが無駄にしたのは自分の時間だけじゃなかったとも言えるんだね…
でも、実はAさん本人は、この転職を失敗だとは思っていません。
Aさんは仕事が好きだったし、自分を必要としてくれる職場で、やりがいを感じて働いて来たからです。結局は、自分がのぞむ環境で仕事をすることが一番!ということですね。
正直なことを言えば、妻である私も完全に失敗だとは思っていません。
ただ、夫が必死に働いているのに、正当に評価されないことがとても悔しいのです…
放射線技師の転職は難しい?成功のポイントは?
では、放射線技師の転職を成功させるためのポイントは?という大事な部分について。
転職に成功するには転職サイトを活用するのが近道
厚生労働省のJobtagによると、放射線技師の有効求人倍率は1.11です。仕事を求める人、1人に対して1.11件の求人があるということですが、実はこの数字はハローワークへの求人数から出されています。ハローワークには出さずに転職サイトにしか求人を出さない企業や病院は多くあります。最初から求めるスキルにマッチした人を紹介してくれる転職サイトだけを利用して、書類選考の手間を省くためです。だから、実際の有効求人倍率はもっと高いと言えます。
もちろん、地域差はありますが、放射線技師の転職は決して難しいわけではないはず。転職を成功させるための一番の近道は転職サイトを利用することです。できれば2つほど、登録したほうが良いです。理由は以下の通り。
- 求人情報数が増える
- 相性の合う担当エージェントと会える確率が上がる
そして、利用するべき転職サイトは技師の仕事に詳しい、技師専門の転職サイトです。放射線技師の仕事内容に詳しいエージェントの方が、求人先の求めるスキルをしっかり理解して、確実にマッチした職場を紹介してくれるから。
放射線技師専門のおすすめ転職サイトについては放射線技師転職サイトおすすめ3選!キャリアアップに最適な方法も参考にしてみてくださいね。
【まとめ】放射線技師の転職は難しい?やり方次第です!
年齢や家族構成などによって、職場に求めるものは変化するものです。例えばこんな感じ。
- スキルアップ
- 年収アップ
- やりがいや楽しさ
- 定年まで安定して働けること
いずれにしても、今より自分が望む環境になるためには、タイミングを逃さず転職することが大事です。
Aさんははたから見ると転職失敗に見えますが、自分が必要とされる職場で思う存分働いてこれたので、これはこれで本人的には大成功。
この先に不安はあるものの、タイミングを逃さず転職したことで、自分の思うように働けたことは事実です。思い切って一歩踏み出さなければ何も変わりませんよね。
もしも転職するのであれば、放射線技師専門の転職サイトをおすすめします。
放射線技師の職務内容を理解しているエージェントの方が、こちらの条件にしっかりマッチした求人情報を示してくれるから。
転職サイトは無料で登録できますし、納得できなければ辞退すればよいだけ。
タイミングを逃して後悔するのだけは、おすすめしません…
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